全ての観客がmimokokoromo ~身も心も~ ピンク色になったライブ(三森すずこライブレポート)

新しいピンク色を届けるライブ

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 声優アーティストとして、時には舞台女優として、男性から若い女性まで幅広く人気を集める“みもりん”こと声優「三森すずこ」さんのライブ『Mimori Suzuko Live 2020 「mimokokoromo」』が2020年2月23日にLINE CUBE SHIBUYA(旧:渋谷公会堂)で開催されました。

 2018年夏に行われた「five tones」のライブから約一年半、僕を含めた多くのファンが待ち望んできたそのライブの様子や魅力を伝えていきたいと思います。

 

 

 三森すずこさんを表すカラーと言えば、可愛さの象徴でもあるピンク色。三森すずこさんの声優活動の原点でもある『ミルキィホームズ』のシャーロック・シェリンフォードのイメージカラーでもあるピンク色が多くの人にとって彼女のイメージカラーとして定着していることでしょう。

 しかし、最近の三森すずこさんは“かわいいピンク色”だけじゃありません。2018年に開催された「five tones」では「様々なカラーの三森すずこ」をテーマに“かっこいい”三森すずこなどの側面も強く押し出されてきました。また、ミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』では大人なアメリカ人女性「アニータ」を見事に演じきったことも記憶に新しいです。『ラブライブ!』シリーズや『レヴュースタァライト』などのユニット活動においてもお姉さん的立ち位置で振る舞うことが多くなってきましたね。

 ところが、近年のこうした流れに抗うように三森すずこさんが作る今回のライブのテーマは「Back to Pink」そして「Brand New Pink」。あの頃の“かわいらしい”ピンク色の三森すずこを再演するだけでなく、今の三森すずこに見合った新しいピンク色を表現する、そのような意味を込めたライブとなりました。

 

 今回のライブ『mimokokoromo』はなんとTシャツからタオル、パンフレットに致るまで、全てのライブグッズがピンク色。極めつきは「みもりんブレード」こと本公演における公式ペンライトで、なんとホワイトと10パターンのピンク色しか出すことができない。異様なまでの徹底したピンクへのこだわりに、果たしてこのライブはどうなってしまうんだろうかと思わずにいられない波乱のライブ。だけど公演が終わって振り返ってみるとなんとも芸術的な、まさに「みもりんワールド」全開なライブであったと感じざるを得ません。その様子を体感できるように、最初の一曲目から振り返っていこうと思います。どうか最後までお付き合い下さい。

 

 

①楽しい休日の始まり

 「みもりんバンド」こと黒須克彦さんを始めとする豪華なバンド陣の演奏に合わせて会場一面がピンク色に染まる中、ステージのスクリーンには休みの日を思わせる映像が流れていく。映し出されたカレンダーがライブ当日の2月23日になったとき、『退屈リダクション』のイントロと共に待望の“みもりん”が姿を表します。

 最初の一曲『holiday mode』収録の『退屈リダクション』は、鬱憤を吹き飛ばして休日を全力で楽しみにいく、そんな曲。「じっとなんてしていたら時間になっちゃうわ」とポップなリズムに乗せて可愛らしく歌いあげる三森すずこさんは自身が誰よりもライブを楽しみにいってるようです。会場も負けじとボルテージが高まっていく、この感覚はまさに“三森すずこのライブが始まった”と実感させられます。

 

 最高のスタートを切った次の曲はなんと『Colorful Girl』。もともとは「みもりんブレード」を使って13色の色換えを行うのが定番な「カラフル」なこの曲が一変、完全にピンク色一色な曲となって再登場しました。

 しかも驚きはまだ止まらない、なんと三森すずこさんの過去の衣装が揃った衣装セットが登場します。『Tropical Paradise』で使われた人魚の衣装や『Grand Revue』で使われた騎士風の衣装、さらには『ミルキィホームズ』の探偵服を始めとした色とりどりの衣装を「みもりんダンサー」と呼ばれるダンサー陣が次々と取り出して着せようとするのですがみもりんはそれを着ようとしない。どうしたんだ?と思った次の瞬間にはピンク色の新衣装に身を包んで現れるのです。

 まさに「私はピンク色じゃないと嫌なの!」と言わんばかりの演出に思わず笑いをこぼしている間に、定番となっている色換えパート「カラフルタイム」に突入します。みもりんの指示通りに公式ペンライトをホワイトから順にボタンを押していくと、真っ白だった会場が少しずつピンク色に染まっていきます。こういう会場一体型の演出が三森すずこさんのライブではとにかく楽しいんです。

 

 

②身も心も‟みもりん色”

 みもりんも会場もピンク色となった後に披露されたのは『holiday mode』収録の『チュッタシュガリ』。休日のお菓子づくりを歌う内容ですが、「チュ チュ チュッタシュガリン」というとにかく可愛い歌詞に頭の中まであまあまふわふわにさせられます。この感覚は麻倉ももの『パンプキン・ミート・パイ』を彷彿とする、まさに可愛さ全開の曲。可愛い歌詞に、可愛いダンスに、僕を含めた多くのミモリアンが「身も心も」三森すずこ一色にされてしまったことでしょう。

 

 完全に会場の全てを支配してしまった後で満を持して披露したのは『ドキドキトキドキトキメキス♡』。フェスでも頻りに披露されるこの可愛さ全開のデジタルポップチェーンに会場のボルテージは最高潮。僕もテンションアガりすぎてこの時のことを全く覚えていません。とにかく可愛い、楽しい、そして可愛い。

 

 

ダイヤのAメドレー

 MCを挟んで披露されたのは『ダイヤのA』のオープニングにもなっている『グローリー!』。この曲は『ダイヤのA』の世界観に合わせ、野球の応援のようにメロディーにのせて「かっとばせー!す・ず・こ!!」と叫ぶのが恒例です。今年のアニサマでも披露されたこの曲ですが、三森すずこさんの現場ともなると「かっとばせー!」のコールにかける熱意が桁違いで、ミモリアンからの愛の深さを感じられる瞬間でした。

 

 『グローリー!』の曲中で不意に音楽が止まったかと思いきやまさかの最新曲『チャンス!』へのメドレーという展開に。これには会場のどよめきもさることながら、何よりも僕自身が「それだあああああああああ!!!」と心の中で叫んでおりました。

 この二曲はどちらも『ダイヤのA』のタイアップ曲で、『チャンス!』は『グローリー!』の世界観を引き継ぎながらも少し大人目線で語り直した曲。昔の三森すずこから今の三森すずこへと、そんな歴史の一編を感じられるメドレーです。

 

 グローリー!→チャンス!というコールの大変なメドレーから続く曲は1stアルバム『好きっ』に収録されている『恋のキモチは5%』。どこか悲しさと共に小さな恋心を歌うこの曲が楽しいメドレーの後の会場に響いてきます。

 

 

④ゆうがた、そして夜に

 ライブも中盤にさしかかり、ここで新曲の『ゆうがた』を披露。ゆうがたの愁いを見事に表現したこの曲でライブの雰囲気がガラッと変化します。

 『ゆうがた』でしんみりムードになった会場に続いて響いた曲は『ちいさな手と観覧車』。楽しさ、切なさ、悲しさ、そこに混ざる恋心が織り成すこの曲は盛り上がりが良くてライブのクライマックスを飾る事が多いのに、今回はライブ中盤で使われることにビックリ。なるほど、今回は「新しい三森すずこ」を探すライブ、そういう使い方をしても良いのか。

 

 『ゆうがた』と『ちいさな手と観覧車』で日暮れ前の何とも言えない感情を表現しきった三森すずこさんは一旦ステージから掃けて、その間をバンド演奏が繋ぎます。

 バンド演奏が終わると三森すずこさんは『ウエストサイドストーリー』のアニータを彷彿とするような大人な衣装を身にまとって再登場、『holiday mode』収録の『Swing of Love』を披露しました。「大人にも色々あるんです」という出だしで始まるこの曲はトキメキス♡と同じPandaBoYさんの作曲したジャズ調の曲であり、ゆうがたムードだった会場は一気に夜のパーティー会場へと大変化。間奏ではサプライズで始まったテーブルクロス引きを見事に成功させて会場を大きく湧かせました。テーブルクロス引きに成功した直後の安心と満足が入り混じったみもりんの表情が最高でした。

 みもりんの「ワン、ツー、スリー、フォー!」の掛け声と共に『純情Da DanDan』が流れる。この曲は三森すずこさんの歌とダンスも勿論のことだが、とにかくバンド演奏が素晴らしい。

 まだまだパーティーは終わらない、続く曲は『tone.』収録の『恋はイリュージョン』。三森すずこさん本人が作詞したこの曲はちょっぴり大人な女性の気持ちを綴ったロマンティックな歌。間奏のタップダンスのキレも一年半前のライブから衰えておらず、寧ろさらに磨きがかかっているようです。

 

 

⑤まるでパジャマパーティの様なライブパート

 『恋はイリュージョン』を披露しきった三森すずこさんは一旦退場、その間を「みもりんダンサー」のダンス披露でつなぎます。彼女たちの踊りはダンスに明るくない僕にも楽しめるもので、そのレベルの高さに毎度毎度驚かされます。

 

 当の三森すずこさんは馴染み深い全身ピンクのドレスに身を包んで登場。その着こなし抜群の姿を見て「やっぱりみもりんはピンクじゃないとなぁ!」とテンションアゲアゲ、ここからはミモリアンが思わず「懐かしい!」と感じる曲たちが立て続けに披露されました。

 まずは『Toyful Basket』収録の『FUTURE IS MINE』。ヒャダインこと前山田健一さんが作詞・作曲を務めた遊び心満載の曲で、2016年の『Grand Revue』以来の披露。その『Grand Revue』でも登場したうさぎの着ぐるみの動物たちと一緒に踊る様子は今も昔も可愛らしさ抜群です。

 続く『Wonderland Love』は『不思議の国のアリス』をモチーフにしたファンタジー溢れる曲。久々の披露もさることながら、「みもりんダンサー」に子供が加わって一緒に踊り始めたことに度肝を抜かれました。まるで本当に不思議の国に迷い込んだよう、そこは完全にみもりんの作る「みもりんワールド」の世界が広がっていました。

 そして次は(個人的に)待望の『Fantasic Funfair』。とにかく“楽しい”を詰め込んだこの曲はいつも三森すずこさんのライブを彩るのに相応しい。とにかくハイテンポなコールの応酬に会場のボルテージは再び最高潮。「私たちはどんな物語の中へ飛び立つのかな」と言う歌詞がまさに今も昔も三森すずこさんの在り方に相応しいなと思わされました。

 

 『Fantasic Funfair』で最高の盛り上がりを見せた後は、『星屑のカーテン』で一気におやすみモードに。三曲続けざまに可愛らしい曲を披露しただけに、大人な憂鬱を歌い上げるこの曲がいっそう深く響き渡る。

心の奥の方で忘れかけていた

輝いた物なんでも集めてたっけな

「Back to Pink」を掲げたライブでこの歌詞を歌い上げるのがなんとも切なくて思わず涙を流さずにはいられない。

 

 

 『退屈リダクション』で元気に登場した三森すずこさんは昼、夕方、夜へと表情を変えながら色んな世界を演じて見せ『星屑のカーテン』で眠りにつくようにそのステージ上から消えていき、その幕を閉じるのでした。

 

 

⑥Encore  「『一生ミモリアンです』と言ってくれることが嬉しい」

 もう十分なほどに三森すずこワールドを見せつけられましたが、ライブはまだまだ終わらない。観客のアンコールに答えて再登場した三森すずこさんが披露した曲はなんと『ヒカリノメロディ』でした。

 いつもアップテンポな曲で華々しく登場する彼女が、『ヒカリノメロディ』をアンコールに持ってきたことには驚きました。しかし、「夢をもっと見せてずっと」という歌い出しに『星屑のカーテン』からの繋がりを感じられたり、彼女がいかに盛り上がりだけでなくライブの構成までも重視しているかを実感します。

 

 続けざまに披露されたのは8thシングルの『エガオノキミヘ』。「君を連れて駆け出すよ 誰も追いつけない場所へ」という歌詞から始まるこの曲は、「ゆゆゆ」の世界観を歌うだけじゃなく全てのミモリアンに贈る歌といっても過言ではないでしょう。個人的な話ですが、この曲は僕も一番好きな三森すずこさんの曲なので歌い出しからもう涙がポロポロ止まりませんでした。「Bland New Pink」を謳うライブでも変わらずこの曲を歌い上げるのがアーティスト三森すずこの在り方なんだとしみじみ思わされます。

 

 二曲を披露した後はMCに突入。今回のライブテーマを決めた経緯などを話しましたが、中でも印象的だったのは前回のライブからの一年半の想いを語っていた箇所。「色んな環境の変化があったけれども、みんなが今でもこうして変わらず応援してくれる事が嬉しい」といった言葉に色んな想いが溢れてきた人はきっと僕だけじゃないでしょう。

 中でも「手紙で『一生ミモリアンです』といって言ってくれる人が多くていつもびっくりする、そんな必要なんて無いのに」などと語って会場の笑いを引き出しながらも、「そんなことを言う人がいてくれることが本当に嬉しい」と語ったのは、いつの日か「皆がいるから『三森すずこ』でいられる、だからみんなが『三森すずこ』なんだ」「1人でも『三森すずこ』のステージが見たいと言う人がいる限り歌い続ける」と語った彼女を思い出します。

 

 会場がMCで感傷的な雰囲気になっている中、最後の曲のタイトルコールに。みもりんの「会いたいよ…」という掛け声に「会いたいよ!」と観客が返して完成するその曲は声優アーティスト三森すずこのデビュー曲『会いたいよ…会いたいよ!』。どこまで行っても「三森すずこ」と「ミモリアン」のつながりを忘れない彼女の姿勢に改めて感動しながらも、フィナーレにふさわしい会場の盛り上がりに。本当にこの曲は王道のアイドルソング調でありながら歌詞もよくてダンスもよくて、それでいてライブで楽しい曲。落ちサビではマイクを客席に向けて一緒に歌わせてくれるのがファンにとっては最高に嬉しかったりする。

 かくしてライブは閉幕、三森すずこのライブは大団円を飾ったのです。

 

⑦W-Encore  ミルキィのメンバーに贈る曲

 …というのはまだ早くて、ステージを下りた三森すずこさんへの二度目のアンコールを受けて最後の再登場。「声優:三森すずこ」として足を踏み出したきっかけでもある、2019年1月にファイナルを飾った『ミルキィホームズ』についての想い出を語りながら最後の一曲『Precious days』を歌います。この曲は『ミルキィホームズ』のメンバーに贈る曲として三森すずこ本人が作詞した曲で、あの頃の日々を振り返りながらも前を向き続ける、そんな曲になってます。

 恥ずかしながら僕はミルキィのライブに行ったことが無くて、ミルキィのことは全然わからないのですが、それでも「そんな人にも別れの時や昔の仲間を思い出して聴いて欲しい」という三森すずこさんの思いが込められていたり、何より彼女のことを見ているだけで三森すずこにとって『ミルキィホームズ』がいかに大きな存在だったかがミルキィを知らない人間にも伝わってきます。

 すべてのミルキアンにとって、そしてミルキィを知らない人にとっても最高の一曲を披露し終え、全20曲のライブ『mimokokoromo』の幕が完全に下りていきました。

 

 

 

‟Bland New Pink”な三森すずこ

 原点回帰の意を込めた「Back to Pink」というテーマを掲げた今回のライブは、『グローリー!』『FUTURE IS MINE』『Fantasic Funfair』をはじめとした多くの曲で昔ながらの「ピンク色」な三森すずこを垣間見ることができ、昔からのファンにとって懐かしさを覚えるライブだったかもしれません。

 ですがそれと同時に、新たな形の『Colorful Girl』や『holiday mode』の収録曲、それになんと言っても最新Singleの『チャンス!』『ゆうがた』のように“オトナかわいい三森すずこ”の曲たちがライブにおいて確かな存在感を放っていたライブでもありました。

 今でも色んな場で活躍している三森すずこさんですが、かようなまでに「みもりんワールド」全開な姿はソロのライブでしか見られません。そして「Bland New Pink」を掲げた今回のライブでは、年を重ねても全く色あせない「みもりんワールド」に気づけばすっかり~身も心も~虜になっていました。どこまでいっても他のアーティストのライブとはひと味違うその感覚に、やっぱり三森すずこさんのライブが大好きだと思わずに居られないのです。